ざっくり比較!ファイバーレーザーvsCo2レーザー加工機
ざっくり比較!ファイバーレーザーvsCo2レーザー
- 素材の切断を行う金属加工機械として、「レーザー加工機」があります。その中に、Co2レーザーと、ファイバーレーザー加工機があります。どっちがいいの?という皆様の疑問にざっくりお答えしようと思います。
- 【追記】3次元レーザーを2台納品させていただいたお客様へのインタビューを追加いたしました(当ページ下部には簡単な説明を記載)。
- 現在のレーザー加工機の在庫リスト 新入荷!三菱:ファイバーレーザー加工機・ML3015eX-F60
(ページ更新日:2024年5月8日 ※本ページ作成日:2019年10月8日)
簡単な機械の仕組み
- おおまかには、レーザー媒質(ファイバーか混合ガスか)、励起源(半導体レーザーか放電か)、共振方法(ファイバーかミラーか)の3点において、ファイバーとCo2に違いがあります。発振器がファイバーになったことでヘッドの構造を改良することができました。Co2は薄板・厚板によりレンズを交換していましたが、ファイバーはヘッドの中の数枚のレンズを調整して加工します。(各社によって、様々な名称で呼ばれます)
どのようなことができるの?
- ファイバーレーザー
金属への吸収率がよく、あまり反射の影響がでないため、高反射材の加工がしやすいという特性があります。具体的にはアルミ・真鍮・銅を切るのに適していると言えます。また、窒素加工に向いており、アシストガスに窒素を用いることで加工速度を上げることができます。近年、各メーカーは発振器の高出力化(6kw・8kw・10kw…)の流れになっています。高出力発振器で窒素加工すると加工速度がさらに上がります。
・鉄・ステンレスの加工については、切断面の品質は突き詰めるとCo2が勝ります。ただ、やはりランニングコストがファイバーの方が安いので、品質をとるかコストをとるか?という悩ましいところに行き着きます。
・発振器のなかに使うレーザーガスはゼロです。アシストガス(酸素、窒素等)は、加工速度が速くなるため、消費量は20%~50%程度減ります。
・Co2よりメンテナンスの負担が少なくてすみます。もともと部品点数が少なく、発振器内部(モジュールカセット)が故障しても予備モジュールが内臓されているので復旧が早いです。とはいえ、モジュールの交換は高額になります。発振器の中が複雑なCo2の場合、熱交換器・ブロアー・電極など消耗品の交換が必要となり、ファイバーに比べて修理代が高くつく傾向があります。
- Co2レーザー
加工面でいうと、アルミ・真鍮・銅など、反射が高い金属は切りづらいです。一方で、鉄の加工については、現時点ではCo2がやや有利です。ガラス・アクリルや木材といった非金属材料を切ることができます。
ファイバーをCo2と比較した場合のメリット・デメリットは?
- メリット
・加工速度が速いです。薄板切断なら、Co2の5-6倍程度の速さです。
切断する前の、穴を貫通させる時間(ピアス)も違い、おおよそ、3-5秒(Co2)かかっていたものが、1-2秒(ファイバー)に短縮されます。
・ランニングコストが安いです。
→電気代が1/3から1/4となり、金額としては一例ですが、月に10-20万が3-5万くらいに減りました(導入したお客様も驚いていました)
→ガス代について
発振器のなかに使うレーザーガスはゼロです。アシストガス(酸素、窒素等)は、加工速度が速くなるため、消費量は20%くらい減ります
→水道代
もともとあまりかかっていないため、あまり気にされる会社はありません - デメリット
・加工速度が速すぎます。そのため、加工する板を取り換える段取りが大変です。そのため、レーザー本体と材料棚をセットで設置することが推奨されます
・Co2と比較すると、新品機械価格が1.5倍くらいとなります
・ステンレスについて
加工速度は、Co2と大差ありません。ただ、ファイバーレーザーの波長がステンレスとは、相性があまり良くありません。そのため、厚板ステンの切断面の品質を求める場合は、Co2が有利です
・加工面の仕上がり
切る素材が厚くなると、切断面の仕上がりは、Co2が有利です。
素材加工例
- 下記画像は、SS304・400・軟鋼などの加工例です。
- ①②③④まで→素材:SS400 板厚:t9.0mm 出力:8000W 加工ガス:窒素 加工時間:49秒(ファイバーレーザー)
- ⑤→素材:A5052 板厚:t15.0mm 出力:4500W 加工ガス:エアー 加工時間:1分52秒(ファイバーレーザー)
- ⑥→素材:SS400 板厚:t25.0mm 出力:4000W 加工ガス:酸素 加工時間:1分25秒(ファイバーレーザー)
- ⑦→素材:SS304 板厚:t12.0mm 出力:4500W 加工ガス:窒素 加工時間:1分18秒(Co2レーザー)
- ⑧→素材:軟鋼 板厚:t16.0mm 出力:4300W 加工ガス:酸素 加工時間:1分25秒(Co2レーザー)
- ※データ出所:2019年7月に開催された「三菱電機メカトロニクスフェア 2019 in 西日本」にて撮影。上記画像の著作権・著作隣接権等は、全て三菱電機株式会社に所属しますので、引用・転用・その他の利用を禁止します。
※「試し切り」のご相談は、077-547-2644もしくはお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
メーカーによって特徴があるの?
- メーカーによって、得意な部分が若干違うと思います。薄板はどこのメーカーでもほぼ差はないと思われます。特に薄板に強いのは渋谷工業、村田機械です。厚板に強いのは三菱電機、小池酸素です。アマダ製は、他にアマダ製の機械を使っている場合に親和性が高いと思います。三菱は薄板から厚板までオールマイティに加工できます。
また、ヘッド周りの技術にも各社しのぎを削っています。例えば、「ガスの消費量70%OFF」というものであったり、レーザ光の軌跡を制御して生産性、加工品質upという技術を提供しているものもあります。
導入価格やランニングコストは?
- 初期導入費用
前述しましたが、新品機械ですと、Co2と比較して機械代が1.5倍くらいになります。出力が小さめの機械でも、大きめの機械でも同様の価格比率です。
- ランニングコスト(メンテナンス等)
・Co2よりも、電気代が70%前後、ガス代は約20%安くなります。
・Co2より定期点検の回数が少ないです。電子基板(ひとつ500-600W)など、機構部品の寿命が長く、1つ発振器部分(カセット)が壊れても、予備があるので、復旧が早いです。発振器の中が複雑なCo2の場合、熱交換器・ブロアー・電極など消耗品の交換が必要となり、ファイバーに比べて修理代が高くつく傾向があります
ファイバー導入を検討する場合、何に着目すればよいか
- 生産量
ファイバーは、大量生産向きです。鋼材生産・建材生産などの材料加工や建築機械・農業機械などの、メーカーで使うことが多いです。その他、精密板金・製缶・メーカーの板金部門で使われています。4×8・5×10サイズで、効率良く大量生産する事業所が向くようです。
- 素材と業種
ステンレスなど、ファイバーが苦手とする素材の場合は、Co2が使われます。また、少量多品種のところは、Co2のタイプが根強く人気があります。
- 設置場所
特に設置場所に制限はありません。材料棚を採用する場合は、そのスペースまで確保する必要があります。
- 切断面
加工仕上がりの差はなくなってきているとはいえ、現時点ではCo2の方が切断面がキレイです。そのため、導入を考えている機械について、製造メーカー等にお願いして、試し切りをさせてもらうことをお勧めします。特に、ステンレス9mm以上の厚板を切った時に、切断面でCo2との差が出ます。 お客様により、求める精度が異なるため、実際に切らせてもらうと「導入してもよいか」の判断がしやすいです。
- 付属機器
集塵機・チラーは共通です。ファイバーは、クーリングタワーは使いません。
三菱製ファイバーレーザー加工機の試し切りをご希望のお客様は、弊社TEL:077-547-2644 もしくは お問い合わせフォーム よりご連絡下さい。日程等の手配をさせていただきます。
ファイバーレーザーの展示会に行って参りました
2019年7月に開催された「三菱電機メカトロニクスフェア」に行って参りました。ファイバーレーザーでの加工デモや技術セミナーなどが行われておりましたので、その様子をご報告いたします。
- ⑨展示されていた三菱ML3015GX-F80
- ⑩ ⑨の機械外側から、加工が始まる前を撮影
- ⑪デモを行う前のセッティング
- ⑫Co2レーザー三菱ML2512HV2-R PLUS
Co2レーザーを2台納品したお客様へ取材に行って参りました(2024年2月)
- 現在まで、数度に渡るお取引の機会を得ており、2023年にも機械設備を納入させていただきました。今回、それら機械の導入メリットや、今後の方針についてお聞き致しました。(2024年5月8日)当日の様子をアップ致しました。
ファイバーレーザーを納入したお客様へ取材に行って参りました(2023年6月)
- 実際に導入後の様子(約1年半)や、業務改善・良かったことなどをお聞き致しました。(2023年8月21日)当日の様子をアップ致しました。
新品ファイバーレーザーを納品いたしました(2022年1月)
- 以前、発注をいただきました、三菱ファイバーレーザー加工機ML3015GX-F100(新品機)を納品いたしました。その様子を、一部掲載させていただきます。弊社では、中古機だけでなく、新品機のご相談も可能です。
その他発振器の違いなど
発振器の種類は、おおまかに3種類があります。
- IPGフォトニクス社 ファイバーレーザーを生産している会社のおよそ9割程度が、IPG社の発信器を使っています。
【出典】https://www.ipgphotonics.com/jp/
- トルンプ社 上記と構造が違い、「ディスクレーザー」という名称で使われています。ファイバーレーザーではありますが、途中に違う仕組みをとっているのが特徴です
【出典】https://www.trumpf.com/ja_JP/products/レーザ/ディスクレーザ/
- マザック社
ダイレクトダイオードレーザー(DDL)という仕組みをとっています。
IPGのシステムより、電気の効率をよくしたものとなります。加工結果は、IPG社製とほぼ変わらない印象です
【出典】
https://www.mazak.jp/machines/optiplex-3015-ddl/
各メーカーについて
(2022年7月4日追記)比較的安価な中国製のファイバーレーザーも出回っているようですが、アフターフォローに課題があるようです。(ココから追記→)かなり厳密な精度が求められる場合は、日本製のレーザーが選択肢として上がりますが、求める精度とコストを考えると、外国製の機械も考えられるお客様もおられるかもしれません。
弊社にて、先日、外国製のテスト機を1台立ち上げてみました。立ち上げ自体は、メカニックがいるため、それほど問題はなかったのですが、使っていく際に困るのではないかと感じられたことが、マニュアルでした。日本製の機械ほど詳しく載っておらず、言葉の問題もありました。動かしていく際に、何か困ったことを解決する時には、どのようにしていけば良いかが課題になるのではないかと思います。(ココまで)
最後に
- 2019年5月時点では、ファイバーの中古機械はほとんど出回っておりません(2022年7月4日追記 少しずつですが、ファイバーの中古機も市場に出てくるようになりました)。2018年度における新品機械国内出荷の市場シェアとしては、ファイバー:60% ・ Co2:40%、アメリカでは80% ・ 20%、全世界ではファイバー:70% ・ Co2:30%という印象です。
加工条件、使用目的により、適した機械を選択されるのが良いと思います。詳しいことは、弊社までお問い合わせ下さい。
弊社(会社概要へ)は、主に中古機械を扱ってはおりますが、新品機もご紹介もいたしております。お問い合わせ、お見積り、サンプル加工のご依頼など、ご遠慮なくお申し付け下さい。